〓朝日新聞DIGITAL 高校野球の総合情報サイトにて
伝統校を中心に全国7校(夕張・釜石・早稲田実・中京大中京・大阪桐蔭・広島商・久留米商)に記者が密着。
公立や私立、被災地や過疎の町など様々な環境のもとで白球を追う球児たちの「いま」を伝えます。
〓http://www.asahi.com/koshien/feature/growth/#school6
(4/22)入学式、野球部だけが校歌絶叫 「手本をみせるんじゃ」〓動画あり
広島商の新入部員が最初に覚えるのは校歌だ。
ああうるわしき厳島(いつくしま)潮にたてる大鳥居
甲子園で何度となく斉唱されたフレーズを、入学式までに暗唱できるようにする。もっとも、メロディーは二の次だ。
「腹から声を出すんじゃ」「体を反れば、もっと大きな声が出る」
1年生指導係の新田渉(わたる)と池田樹(いつき)(ともに2年)の教えは明快だ。
1日に初集合し、「まずは広島商野球部の基本を学ぶ」と檜山忠監督。だから指導係には真面目でリーダーシップのある2年生が選ばれる。夏までは自分の練習よりも、1年生の指導を優先することになる。
校歌とともに、最初に教えるのがあいさつ。「おはようございます」「失礼します」。お辞儀の角度にも気をつける。「つま先より2メートル前を見るんじゃ」と池田。大きな声であいさつするよう指導するが、「校舎の1階だけはボリュームを抑えろや。職員室があって会議も多いけんな」
「はい」の返事は「は」と「い」を短く発音する。挙手する際は、手のひらを内側に向けて右手を真っすぐ挙げる。「相手に親指が見えんようにするんじゃ」と新田は指導する。
そして、校歌。これもあいさつや返事と同様に、自分の一番大きな声で歌うように教える。今年の入部希望者は36人。2日から指導を始め、全員で歌うだけでなく、一人ひとり歌わせてチェックもした。
入学式は7日。ふつうの新入生は校歌を覚えていないものだ。「ええか、野球部が手本を見せるんじゃ」
迎えた入学式当日は、全国的にあいにくの雨。大粒の雨が屋根をたたく体育館に、箏曲部の奏でる琴の音色が広がる。厳かな雰囲気で、新入生の入場だ。山田剛司校長の式辞などがつつがなく終わり、いよいよ最後に校歌の演奏だ。新入生が立ち上がる。各クラスに散らばった丸刈り頭の36人。一般生徒と比較すると、両足の開き幅がかなり広い。
ああ、うるわぁしき、厳島ぁ~
36人の大合唱、いや大絶叫に、新入生も保護者もあっけにとられている。36人はお構いなしだ。「広商の野球部魂」を、みんなに見せなければならない。
新入部員たちは校歌を2番まで見事に歌いきった。いや、がなりきった。でも、赤沢雄祐・副部長はちょっぴり不満顔だ。自身も野球部OBでもある。
「あいつら、1番の終わりぐらいで(伴奏に)合わせにいったでしょ。もっとズレんといけんよ」とにもかくにも、力強い第一歩を踏み出した。
(4/26)野球部だけじゃない 学年全員で校歌絶叫、結構楽しい?
7日の入学式で野球部員が校歌を熱唱した広島商では、その直後から、新入生全員が放課後に校歌を練習するのが恒例だ。今年も週が明けた12、13日に各教室で練習したあと、14、15日に全体練習が実施された。
場所はグラウンド脇のスタンド。野球部員も練習したところだ。生徒会が主催し、応援部が指導する。総仕上げの15日を取材した。
「校舎(グラウンドの反対側)に届くように歌いましょう」。応援部員はチアリーダーの女子生徒16人。言葉は軟らかいが、言っている内容は野球部の1年生指導係と同じだ。「おなかから声を出して」「音程は気にしなくていいから」
ああうるわしき厳島(いつくしま) 潮(うしお)にたてる大鳥居
これはすごい! 321人の大合唱だ。入学式では浮いていた野球部36人に、他の生徒がついていっている。両足を広げ、上を向いて声を出す。野球部員ほどではないが、男子も女子も体が前後に揺れている。大声を出そうとすると、人は体を揺らすものなんだ。
最後はクラスごとに歌って、約100メートル先の校舎前にいる生徒会役員がチェックする。「前半が小さかった」「もっと楽しめば、もっと大きな声が出る」。合格したクラスから帰れるのだが、審査はなかなかシビアだ。
開始から約2時間。ようやく全8クラスが合格できた。「のどがやばい」「ホンマ疲れたで」。そう言いつつ、新入生たちの表情は全体的に明るい。
「これがきっかけで仲良くなれる」「クラスが団結できる」「どの高校よりも私たちは校歌を大事にしているんです」。指導を終えた応援部員も笑顔で語る。
「広商と言えば野球部。こうした行事も、先輩方から脈々と続く伝統のおかげだと思います」。生徒会の藤本尽(じん)会長は野球部の3年生。会長と体育委員長、交通安全委員長は毎年、野球部員が務めているという。
昨年は野球部の1年生指導係だった藤本会長。「あいつら、ちゃんとやっとるか」と心配だったが、「今年は団結というか、一体感を味わえました」と笑う。3年連続で校歌と向き合う4月となった。
伝統校を中心に全国7校(夕張・釜石・早稲田実・中京大中京・大阪桐蔭・広島商・久留米商)に記者が密着。
公立や私立、被災地や過疎の町など様々な環境のもとで白球を追う球児たちの「いま」を伝えます。
〓http://www.asahi.com/koshien/feature/growth/#school6
(4/22)入学式、野球部だけが校歌絶叫 「手本をみせるんじゃ」〓動画あり
広島商の新入部員が最初に覚えるのは校歌だ。
ああうるわしき厳島(いつくしま)潮にたてる大鳥居
甲子園で何度となく斉唱されたフレーズを、入学式までに暗唱できるようにする。もっとも、メロディーは二の次だ。
「腹から声を出すんじゃ」「体を反れば、もっと大きな声が出る」
1年生指導係の新田渉(わたる)と池田樹(いつき)(ともに2年)の教えは明快だ。
1日に初集合し、「まずは広島商野球部の基本を学ぶ」と檜山忠監督。だから指導係には真面目でリーダーシップのある2年生が選ばれる。夏までは自分の練習よりも、1年生の指導を優先することになる。
校歌とともに、最初に教えるのがあいさつ。「おはようございます」「失礼します」。お辞儀の角度にも気をつける。「つま先より2メートル前を見るんじゃ」と池田。大きな声であいさつするよう指導するが、「校舎の1階だけはボリュームを抑えろや。職員室があって会議も多いけんな」
「はい」の返事は「は」と「い」を短く発音する。挙手する際は、手のひらを内側に向けて右手を真っすぐ挙げる。「相手に親指が見えんようにするんじゃ」と新田は指導する。
そして、校歌。これもあいさつや返事と同様に、自分の一番大きな声で歌うように教える。今年の入部希望者は36人。2日から指導を始め、全員で歌うだけでなく、一人ひとり歌わせてチェックもした。
入学式は7日。ふつうの新入生は校歌を覚えていないものだ。「ええか、野球部が手本を見せるんじゃ」
迎えた入学式当日は、全国的にあいにくの雨。大粒の雨が屋根をたたく体育館に、箏曲部の奏でる琴の音色が広がる。厳かな雰囲気で、新入生の入場だ。山田剛司校長の式辞などがつつがなく終わり、いよいよ最後に校歌の演奏だ。新入生が立ち上がる。各クラスに散らばった丸刈り頭の36人。一般生徒と比較すると、両足の開き幅がかなり広い。
ああ、うるわぁしき、厳島ぁ~
36人の大合唱、いや大絶叫に、新入生も保護者もあっけにとられている。36人はお構いなしだ。「広商の野球部魂」を、みんなに見せなければならない。
新入部員たちは校歌を2番まで見事に歌いきった。いや、がなりきった。でも、赤沢雄祐・副部長はちょっぴり不満顔だ。自身も野球部OBでもある。
「あいつら、1番の終わりぐらいで(伴奏に)合わせにいったでしょ。もっとズレんといけんよ」とにもかくにも、力強い第一歩を踏み出した。
(4/26)野球部だけじゃない 学年全員で校歌絶叫、結構楽しい?
7日の入学式で野球部員が校歌を熱唱した広島商では、その直後から、新入生全員が放課後に校歌を練習するのが恒例だ。今年も週が明けた12、13日に各教室で練習したあと、14、15日に全体練習が実施された。
場所はグラウンド脇のスタンド。野球部員も練習したところだ。生徒会が主催し、応援部が指導する。総仕上げの15日を取材した。
「校舎(グラウンドの反対側)に届くように歌いましょう」。応援部員はチアリーダーの女子生徒16人。言葉は軟らかいが、言っている内容は野球部の1年生指導係と同じだ。「おなかから声を出して」「音程は気にしなくていいから」
ああうるわしき厳島(いつくしま) 潮(うしお)にたてる大鳥居
これはすごい! 321人の大合唱だ。入学式では浮いていた野球部36人に、他の生徒がついていっている。両足を広げ、上を向いて声を出す。野球部員ほどではないが、男子も女子も体が前後に揺れている。大声を出そうとすると、人は体を揺らすものなんだ。
最後はクラスごとに歌って、約100メートル先の校舎前にいる生徒会役員がチェックする。「前半が小さかった」「もっと楽しめば、もっと大きな声が出る」。合格したクラスから帰れるのだが、審査はなかなかシビアだ。
開始から約2時間。ようやく全8クラスが合格できた。「のどがやばい」「ホンマ疲れたで」。そう言いつつ、新入生たちの表情は全体的に明るい。
「これがきっかけで仲良くなれる」「クラスが団結できる」「どの高校よりも私たちは校歌を大事にしているんです」。指導を終えた応援部員も笑顔で語る。
「広商と言えば野球部。こうした行事も、先輩方から脈々と続く伝統のおかげだと思います」。生徒会の藤本尽(じん)会長は野球部の3年生。会長と体育委員長、交通安全委員長は毎年、野球部員が務めているという。
昨年は野球部の1年生指導係だった藤本会長。「あいつら、ちゃんとやっとるか」と心配だったが、「今年は団結というか、一体感を味わえました」と笑う。3年連続で校歌と向き合う4月となった。